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木村眞康(文学圏の創刊者)
冷え冷えと冬空あがり少年の夢こわれたる屋敷跡あり
ウィンドに一個五円のふだを立て僅かばかりの餅並べいる
踏みつけて童がゆきしくさむらに蕗の薹あり色鮮しく
日暮には日暮の匂い満ちており青き穂波の動く麦畑
野の果てに暮色なじまずひとときを燃えたと見せて夕茜空
西部治夫
年をとる度に私の体は小さくなるが気持ちは太々しくなる
詩には原作も 脚色者もいない ひとりぼっちを今日も奏でる
正月が地平線から近づいてくるのがよく見える 私の地平線
地を這っている蟻が大きく見え 私が小さく見える日もある
遠いところは夢で 近いところは杖でたぐり寄せる私の旅
岸原広明
寂しさが匂うほどなるひとり居のあけくれ今日も清しくぞあれ
茫々とさびしき過去は過去として珠玉のごとき涙を愛す
あたたかき思い出一つ遥かなりああ春の陽に言葉よ蘇かえれ
さわやかに吹く風すでに夏のもの想い若やぎ見つむるいのち
春あさきひと夜をいのち相いだくおろそかならぬいとしさ秘めて