「短歌」(角川書店)平成15年10月号掲載


角川書店の月刊短歌総合誌「短歌」の「わが結社のいま・・・」に記事が掲載されました。

 

 「文学圏は昭和二十一年に創刊第一号を発行した。平成十五年九月号で第五十八巻通巻五七〇号となる。

 月例歌会は主に姫路で行い、忌憚のない批評を述べ、感性が磨かれるように励ましあっている。司会も全員が輪番でつとめ提出歌も集めている。新旧かなづかいは各自の選択。

 恒例の一泊吟行会は、十一月十日吉野探訪の予定。万葉の道をたどり竹林院群芳園に宿泊。水分神社、如意輪寺などを借り切りバスにてめぐり、十六年二月号に吟行詠特集を組む予定である。

 巻頭作品は吉野栄子、堀千寿子、奥村富美江ら。連載は佐藤當行の「万葉の周辺」、岩朝加都良の「ことばのノート」、作品は作品はⅠ欄、Ⅱ欄に分けている。その批評はそれぞれ丸岡哲朗、大野八重子、植木清理、永井健らが担当。

 「私の好きな一首」は月々三人が担当、岸本寿代、吉田千代美、山下清市ら。十首選も会員が月々選んでいる。

 青青集は作品Ⅱより選ぶ。五十歳代の人々の進歩が結社を若がえらせてくれている。しかし、前代表の松田道別や南部常松の追悼特集を組むさびしさも味わった。

 会員は「青天」「長風」「運河」「水甕」などにより学ぶ人もあり、関東から九州におよぶ。それぞれの個性を損なわないようにしながら基本に立ち返り研鑽を積んでいる。

 柳田国男、井上通泰追悼の山桃忌奉賛短歌祭も十八回を数え、会員の多くが柳田の生家へ集い、「遠さな名を人二呼ばるるふるさ登は昔に可へるここと古そすれ」の歌碑をたずね昔日をしのんだ。六〇〇号もそこに見えてきた。(記・浮田伸子)


 

訪ふ人のまれなる門辺にくれなゐのダリアはひそかに花数増やす  岩朝加都良

 

スプーンに掬ふ果肉のうす青き滴が十四歳の罪を滲ます  下村千里

 

西空の低きに母の星ありて菜の花色にまたたいている  青田綾子

 

年に二度つどへる子らの声ひびき祭りのごとし家も木草も  浮田伸子

 

些かの風にも揺るる街路樹に空蝉一つ縋りつきおり  木村満二

 

 

以上、「短歌」(角川)平成15年10月号177頁。